
紅茶と緑茶は、紅茶と緑茶は同じ茶葉?カメリアシネンシスって何?違いを紅茶工場が解説
紅茶と緑茶は、色も香りも味わいも大きく異なります。
紅茶は赤褐色で華やかな香りがあり、緑茶は緑色や黄緑色を帯び、爽やかな香りや旨みを楽しめるお茶です。
そのため、「紅茶と緑茶は、もともと違う植物の葉から作られているのでは?」と思っている方もいるかもしれません。
しかし、実は紅茶も緑茶も、基本的には同じ種類の植物から作られています。
その植物の名前が、**カメリア・シネンシス(Camellia sinensis)**です。
さらに、この植物には中国種やアッサム種と呼ばれるタイプがあり、両者の特徴を持つ交配種も世界各地で栽培されています。
私たちがスリランカ・キャンディで運営する紅茶農園でも、中国種とアッサム種の交配種を栽培しています。
今回は、紅茶と緑茶が同じ植物から作られる理由、カメリア・シネンシスの特徴、中国種とアッサム種の違い、交配種の役割について、紅茶工場の視点からわかりやすく解説します。
普段飲んでいる一杯の紅茶が、どのような植物から生まれているのか、一緒に見ていきましょう。
紅茶と緑茶は同じ茶葉から作られている?
結論からいうと、紅茶と緑茶は、基本的に同じ種類の植物から作られています。
その植物が、チャノキと呼ばれるカメリア・シネンシスです。
では、同じ植物の葉なのに、なぜ紅茶と緑茶では色や香りが大きく違うのでしょうか。
紅茶・緑茶・ウーロン茶の原料は同じチャノキ
紅茶、緑茶、ウーロン茶は、いずれもチャノキの葉を原料とするお茶です。
チャノキはツバキ科ツバキ属の植物で、世界各地のお茶の生産地で栽培されています。
私たちが普段飲んでいるお茶の多くは、このチャノキから作られています。
代表的なものには、次のようなお茶があります。
- 紅茶
- 緑茶
- ウーロン茶
- 白茶
- 黄茶
- 黒茶(後発酵茶)
これらは製造方法や地域によって分類されるお茶で、原料となる植物は基本的に共通しています。
ただし、すべてのお茶が同じ品種の茶樹から作られているわけではありません。
チャノキにはさまざまな変種や栽培品種があり、それぞれの地域や製茶方法に適したものが利用されています。
同じ茶葉なのに色や味が違う理由
紅茶と緑茶の違いを生み出す大きな要因が、製造方法です。
特に重要なのが、茶葉に含まれる酵素の働きによる酸化反応です。
緑茶は、収穫した茶葉を蒸したり釜で炒ったりして、酸化酵素の働きを早い段階で止めます。
一方、紅茶は、茶葉を萎れさせたり揉んだりする工程を経て、酵素による酸化反応を進めます。
この過程で茶葉の成分が変化し、紅茶特有の色や香り、味わいが形成されます。
ウーロン茶では、酸化の進み具合を調整することで、緑茶とも紅茶とも異なる風味を生み出します。
つまり、紅茶と緑茶の大きな違いは、植物そのものよりも、収穫後の茶葉をどのように加工するかにあります。
紅茶用・緑茶用の品種はある?
同じチャノキから作られるとはいえ、紅茶用と緑茶用で適した品種が異なる場合があります。
例えば、日本では緑茶の生産に適した栽培品種が数多く育成されています。
一方、インドやスリランカなどの紅茶産地では、紅茶の製造に適した品種や系統が選ばれています。
ただし、これは「緑茶用の品種から紅茶は作れない」という意味ではありません。
緑茶用として栽培されている茶葉を使って紅茶を作ることもできます。
反対に、紅茶の生産に使われる茶葉から緑茶を作ることも可能です。
実際の味わいや品質は、品種と製造方法の組み合わせによって変わります。
そのため、茶樹の種類と製茶方法は、分けて考えることが大切です。
カメリア・シネンシス(Camellia sinensis)とは?
カメリア・シネンシスという名前は、普段お茶を飲んでいるときには、あまり耳にしないかもしれません。
しかし、紅茶や緑茶の原料を理解するうえで、とても重要な植物です。
カメリア・シネンシスはチャノキの学名
カメリア・シネンシス(Camellia sinensis)は、チャノキの学名です。
学名とは、植物や動物などを科学的に分類するために使われる名前です。
「Camellia」はツバキ属を、「sinensis」は中国に由来することを示しています。
つまり、カメリア・シネンシスは、植物学的に分類されたチャノキという種の名前です。
ここで注意したいのは、カメリア・シネンシスが特定の紅茶品種を指す名前ではないことです。
中国種もアッサム種も、一般的にはこのカメリア・シネンシスの中に位置づけられます。
なお、植物の分類には研究上の見解の違いがあり、茶樹の細かな分類が文献によって異なる場合もあります。
この記事では、茶業で広く用いられる中国種とアッサム種という区分を中心に解説します。
ツバキ科ツバキ属の常緑植物
チャノキは、ツバキ科ツバキ属に属する常緑植物です。
常緑植物とは、一年を通じて葉を保つ植物のことです。
茶樹は栽培方法によって樹形が変わりますが、自然に成長させると、茶畑で見かける姿よりも大きくなる場合があります。
一方、商業的な茶園では、新芽を収穫しやすくするため、定期的な剪定や整枝を行います。
そのため、茶園では腰の高さほどに整えられた茶樹を見かけることが多いのです。
また、紅茶や緑茶の製造では、一般的に若い芽や葉を利用します。
一芯二葉と呼ばれる、新芽とその下の2枚の葉を摘み取る方法も広く知られています。
ただし、実際の摘採基準は産地や製品、栽培条件によって異なります。
お茶の木にはさまざまな種類・品種がある
チャノキと一口にいっても、世界中で栽培されている茶樹がすべて同じ特徴を持っているわけではありません。
茶樹には、葉の大きさや樹形、成長速度、気候への適応性などに違いがあります。
また、長い栽培の歴史の中で、地域に適した品種が選ばれたり、異なる系統を掛け合わせた交配種が育成されたりしてきました。
さらに、優れた性質を持つ茶樹を挿し木などで増やし、同じ遺伝的特徴を持つ株を栽培する方法も利用されています。
こうした多様性が、世界各地のお茶の個性を支えています。
ルイボスティーやハーブティーとの違い
ここまで、紅茶や緑茶は同じチャノキから作られると説明しました。
しかし、「お茶」と呼ばれる飲み物が、すべてカメリア・シネンシスから作られるわけではありません。
例えば、ルイボスティーは南アフリカ原産のルイボスという植物から作られます。
カモミールティーやペパーミントティーなどのハーブティーも、それぞれ異なる植物を原料としています。
つまり、一般的な飲み物の名前としての「お茶」と、植物学的なチャノキ由来のお茶は、必ずしも同じではありません。
紅茶・緑茶・ウーロン茶はチャノキ由来のお茶ですが、ルイボスティーや多くのハーブティーは別の植物から作られています。
カメリア・シネンシスの中国種とアッサム種の違い
カメリア・シネンシスには、茶業で広く知られている2つの主要なタイプがあります。
それが、中国種とアッサム種です。
どちらもチャノキの仲間ですが、葉の大きさや樹形、栽培環境への適応などに違いがあります。
中国種(var. sinensis)の特徴
中国種は、学名でCamellia sinensis var. sinensisと表されます。
一般的に、アッサム種と比較すると葉が小さく、樹高も比較的低くなりやすい特徴があります。
また、比較的冷涼な環境にも適応しやすい傾向があります。
中国種は、中国や日本をはじめ、さまざまな地域のお茶の生産に利用されています。
緑茶だけでなく、紅茶やウーロン茶の製造にも使用されます。
味わいについては、繊細な香りやすっきりとした風味が特徴として語られることがあります。
ただし、中国種だから必ず香りが繊細になるというわけではありません。
栽培品種や産地、製茶方法によって、味わいは大きく変わります。
アッサム種(var. assamica)の特徴
アッサム種は、学名でCamellia sinensis var. assamicaと表されます。
一般的に、中国種よりも葉が大きく、温暖で湿潤な環境に適応しやすい傾向があります。
また、自然に成長させると大きな樹木状になる場合があります。
アッサム種は、インドのアッサム地方をはじめ、世界各地の紅茶生産で利用されてきました。
アッサム種を利用した紅茶は、しっかりとしたコクや力強い味わいを持つものが多く、ミルクティーにもよく使われます。
ただし、アッサム種を使えば必ず濃厚な紅茶になるわけではありません。
同じアッサム種でも、品種や栽培環境、製造方法によって風味は異なります。
なお、アッサム種の起源や茶樹の伝播の歴史については、研究上さまざまな議論があります。
そのため、現在の栽培地域と植物の厳密な起源を同一視しないことも大切です。
葉の大きさ・気候・栽培環境を比較
中国種とアッサム種の特徴を、表にまとめてみましょう。
| 比較項目 | 中国種 | アッサム種 |
|---|---|---|
| 学名 | Camellia sinensis var. sinensis | Camellia sinensis var. assamica |
| 葉の大きさ | 比較的小さい | 比較的大きい |
| 樹形 | 低木状になりやすい | 大きく成長しやすい |
| 気候への適応 | 比較的冷涼な環境にも適応 | 温暖湿潤な環境を好む傾向 |
| 主な利用例 | 緑茶・紅茶・ウーロン茶など | 紅茶・一部の緑茶など |
| 味わいの傾向 | 繊細な香りが特徴になる場合がある | 力強いコクが特徴になる場合がある |
※一般的な傾向を示したもので、すべての品種に当てはまるわけではありません。
このように、両者には植物としての特徴に違いがあります。
ただし、葉の大きさだけを見て、必ず中国種かアッサム種かを判断できるわけではありません。
交配種やさまざまな栽培品種も存在するためです。
香り・渋み・コクにはどんな違いがある?
中国種とアッサム種を比較するとき、よく紹介されるのが味わいの違いです。
中国種は繊細な香り、アッサム種は力強いコクを持つと説明されることがあります。
これは、それぞれの特徴を理解するための一つの目安になります。
しかし、実際の紅茶の味わいは、茶樹の種類だけで決まるわけではありません。
例えば、同じ系統の茶樹でも、栽培する地域の標高や気温、雨量によって茶葉の性質は変わります。
さらに、摘採する時期や製茶工程によっても、香りや渋み、コクに違いが生まれます。
そのため、紅茶の味わいを理解するには、品種・産地・栽培環境・製造方法を組み合わせて考えることが重要です。
紅茶と緑茶の違いは茶葉の種類より製造方法にある
中国種とアッサム種には、それぞれ植物としての特徴があります。
しかし、紅茶と緑茶の違いを生み出す大きな要因は、茶葉の製造方法です。
ここでは、茶葉に含まれる酵素の働きに注目してみましょう。
緑茶は酸化酵素の働きを早い段階で止める
緑茶の製造では、収穫した茶葉を蒸したり、釜で炒ったりする工程があります。
これは、茶葉に含まれる酸化酵素の働きを早い段階で止めるためです。
酵素の働きを抑えることで、カテキン類などの酸化反応が大きく進むのを防ぎます。
その結果、緑茶特有の色や香り、味わいが形成されます。
ただし、緑茶の色や風味は、品種や製造方法、保存状態によっても異なります。
また、緑茶にもさまざまな種類があり、蒸し製や釜炒り製など、製法によって個性が生まれます。
紅茶は茶葉の酸化発酵を進める
紅茶は、茶葉に含まれる酵素の働きを利用して酸化反応を進めるお茶です。
一般的なオーソドックス製法では、萎凋、揉捻、酸化発酵、乾燥などの工程を経て製造されます。
萎凋は、摘み取った茶葉の水分を減らし、しなやかにする工程です。
揉捻では、茶葉を揉むことで細胞組織に変化を与え、酵素と成分が反応しやすい状態を作ります。
その後、適切な温度や湿度などの条件で酸化反応を進めます。
この過程で、茶葉に含まれるカテキン類などが変化し、紅茶特有の色や香り、味わいが生まれます。
なお、紅茶の製造で一般的に使われる「発酵」という言葉は、主に酵素による酸化反応を指します。
ヨーグルトや納豆のような、微生物による発酵とは仕組みが異なります。
紅茶の製造方法について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
▶︎ オーソドックス製法とは?CTC製法との違いを紅茶工場が解説

ウーロン茶は酸化の進み方を調整する
ウーロン茶も、カメリア・シネンシスの葉から作られます。
紅茶と緑茶の中間的な製造方法として紹介されることがありますが、実際にはさまざまな製法があります。
ウーロン茶では、茶葉を揺らしたり、静置したりしながら酸化反応を進め、その後に加熱して酵素の働きを止めます。
酸化の程度や製造工程によって、花のような香りを持つものから、しっかりとした焙煎香を楽しめるものまで、幅広い種類があります。
つまり、ウーロン茶も茶樹の種類だけで決まるものではありません。
どのような製茶工程を経るかが、味わいを大きく左右します。
同じ茶葉でも異なるお茶を作れる?
同じ品種の茶葉を使って、紅茶と緑茶を作ることは可能です。
例えば、日本では緑茶用として知られる品種から紅茶を製造する取り組みも行われています。
こうした日本産の紅茶は、和紅茶と呼ばれることがあります。
一方、アッサム種の茶葉を使って緑茶を作ることもできます。
ただし、同じ茶葉から異なる種類のお茶を作れるからといって、どの品種でも同じ品質になるわけではありません。
茶葉に含まれる成分や香りの特性は品種によって異なり、それぞれの製法との相性があります。
そのため、実際の茶業では、作りたいお茶の種類や栽培環境に合わせて品種を選ぶことが重要になります。
中国種とアッサム種を掛け合わせた交配種とは?
ここまで、中国種とアッサム種の特徴を紹介してきました。
しかし、現在の茶業では、この2つのタイプを単純に分けるだけでは説明できないほど、多様な茶樹が利用されています。
その一つが、交配種です。
なぜ異なる茶樹を交配させるのか
交配とは、異なる個体を掛け合わせて、次の世代の植物を育成することです。
茶樹の品種改良では、香りや味わいだけでなく、さまざまな性質が重視されます。
例えば、次のような特徴です。
- 香りや味わいの良さ
- 茶葉の収量
- 病害虫への抵抗性
- 乾燥や寒さなどへの適応性
- 新芽の成長特性
- 製茶方法との相性
中国種とアッサム種の系統を掛け合わせることも、こうした品種改良の方法の一つです。
ただし、交配すれば必ず両方の優れた性質を受け継ぐとは限りません。
交配によって生まれた個体の性質には違いがあるため、長い時間をかけて選抜や評価を行います。
香り・味わい・収量・耐病性を考えた品種改良
茶樹の品種改良では、飲み物としての品質だけでなく、農園で安定して栽培できることも重要です。
例えば、香りの良い茶樹であっても、栽培する地域の気候に適していなければ、安定した収穫が難しくなる場合があります。
また、収量が多い茶樹でも、製造した紅茶の品質が目的に合わなければ、必ずしも適した品種とはいえません。
そのため、品種改良では複数の条件を総合的に評価します。
世界各地の茶業研究機関では、こうした目的に応じて、長年にわたり茶樹の選抜や育種が進められてきました。
交配種は、単に中国種とアッサム種の中間的な味わいを目指したものではありません。
その土地で安定して育ち、目的に合った品質の茶葉を生産するための工夫でもあるのです。
交配種とクローン品種は何が違う?
交配種とクローン品種は、混同されやすい言葉です。
しかし、両者は異なる概念です。
交配種とは、異なる親個体を掛け合わせて生まれた系統や品種を指します。
一方、クローン品種とは、選抜した優良な茶樹を挿し木などの栄養繁殖によって増やした品種を指す言葉として、茶業で使われます。
例えば、交配によって生まれた茶樹の中から優れた個体を選び、それを挿し木で増やすことがあります。
この場合、その茶樹は交配による由来を持ち、同時にクローンとして増殖されていることになります。
つまり、交配種とクローン品種は、必ずしも対立する分類ではありません。
交配は新しい遺伝的組み合わせを生み出す方法であり、クローン増殖は選抜した個体の性質を保ちながら増やす方法です。
ダージリンや台湾紅茶に見られる品種の多様性
茶樹の多様性は、世界各地の紅茶産地でも見られます。
例えば、インドのダージリンでは、中国種系の茶樹に加えて、さまざまな系統や選抜されたクローン品種が利用されています。
そのため、ダージリン紅茶を一つの茶樹のタイプだけで説明することはできません。
また、台湾でも紅茶の生産に向けた品種改良が行われています。
代表的な例が、台茶18号(紅玉)です。
台茶18号は、アッサム種系の茶樹と台湾の在来茶樹系統を交配して育成された品種として知られています。
ミントやシナモンを思わせる特徴的な香りが語られることもあります。
ただし、台茶18号を単純に「中国種とアッサム種の交配種」と説明するのは正確ではありません。
このように、世界の紅茶産地では、それぞれの地域に適した茶樹の選抜や品種改良が進められています。
スリランカの紅茶農園でも交配種が使われている?
中国種やアッサム種、そして交配種の違いは、植物学的な知識だけではありません。
実際の紅茶生産にも深く関係しています。
ここでは、私たちが紅茶を生産しているスリランカの例を紹介します。
セイロン紅茶を生み出す茶樹の多様性
スリランカは、世界的に知られる紅茶の生産国です。
スリランカで生産される紅茶は、一般的にセイロン紅茶と呼ばれています。
セイロン紅茶には、ウバ、ディンブラ、ヌワラエリヤ、キャンディ、ルフナなど、さまざまな産地があります。
これらの地域では、標高や気候、雨量などが異なります。
また、茶園ごとに栽培されている茶樹の品種や系統が異なる場合もあります。
そのため、セイロン紅茶を一つの品種だけで説明することはできません。
スリランカの茶業では、各地の栽培環境に適した茶樹の選抜や育成が行われてきました。
標高・気温・雨量によって変わる栽培環境
スリランカの紅茶産地は、標高によって栽培環境が大きく異なります。
一般的に、標高の高い地域では気温が比較的低くなり、茶葉の成長や香りの形成にも影響します。
一方、標高の低い地域では温暖な気候のもとで茶樹が育ちます。
また、雨量や季節風の影響も地域によって異なります。
こうした環境の違いが、茶葉の成長や品質に関係しています。
ただし、標高が高ければ必ず香りが良い、低ければ必ずコクが強いという単純な関係ではありません。
品種や摘採時期、製造方法なども重要です。
セイロン紅茶の産地ごとの特徴については、こちらの記事で詳しく紹介しています。

キャンディにある私たちの農園でも交配種を栽培
私たちがスリランカ・キャンディで運営する農園でも、中国種とアッサム種の交配種を栽培しています。
紅茶というと、産地名や茶葉のグレードに注目されることが多いかもしれません。
しかし、実際の紅茶生産では、その土地でどのような茶樹を育てているかも重要です。
茶樹には、それぞれ成長の仕方や葉の特徴、栽培環境への適応性などに違いがあります。
そして、収穫した茶葉をどのように加工するかによって、最終的な紅茶の香りや味わいが形づくられます。
私たちの農園でも、交配種を栽培していることは、紅茶づくりを支える要素の一つです。
ただし、交配種だから必ず高品質になるというわけではありません。
茶樹の栽培管理や摘採、製茶工程などを含めて考えることが大切です。
品種だけでは決まらないセイロン紅茶の味わい
同じ品種の茶樹を栽培していても、茶園の環境や製造方法によって、紅茶の味わいは変わります。
例えば、茶葉の摘採時期や成長状態、萎凋の進み具合、揉捻の方法、酸化発酵の管理などは、製品の品質に関係します。
そのため、茶樹の品種だけを見て、完成した紅茶の味わいを正確に判断することはできません。
私たちが紅茶工場の視点から大切にしたいのは、茶樹の特徴と製茶工程の両方を理解することです。
品種は紅茶の個性を形づくる重要な要素ですが、それだけで完成するわけではありません。
茶樹が育つ環境と、収穫後の加工が組み合わさって、一杯の紅茶が生まれます。
茶樹の種類によって紅茶の味は変わる?
ここまで、中国種・アッサム種・交配種について紹介してきました。
では、茶樹の種類が違うと、実際に紅茶の味わいも変わるのでしょうか。
答えは、変わる場合があります。
ただし、品種だけで味が決まるわけではありません。
品種による香りや成分の違い
茶樹の品種によって、葉に含まれる成分の量や組成が異なる場合があります。
例えば、カテキン類やアミノ酸類、香りに関係する成分などは、品種や栽培条件によって違いが生まれます。
こうした成分の違いは、紅茶の製造工程で起こる反応にも影響します。
その結果、完成した紅茶の香りや渋み、コクなどに違いが現れることがあります。
ただし、同じ品種でも、栽培環境や製造条件が変われば成分や味わいは変化します。
そのため、品種名だけで紅茶の味を決めつけることはできません。
産地の標高・気候・土壌が与える影響
紅茶の味わいには、茶樹が育つ環境も関係します。
例えば、標高や気温、日照、雨量、土壌条件などです。
これらの条件は、茶葉の成長や成分の形成に影響する場合があります。
また、同じ産地でも季節によって気象条件が変わるため、茶葉の特徴が変化することがあります。
紅茶の産地による味わいの違いは、こうした環境要因と品種、製造方法などが組み合わさって生まれます。
製造方法によって変わる香り・渋み・コク
茶樹の種類が同じでも、製造方法によって紅茶の味わいは変わります。
例えば、萎凋の条件によって茶葉の水分状態や成分の変化が異なります。
また、揉捻や酸化発酵の進め方によって、香りや色、渋み、コクなどに違いが生まれます。
さらに、乾燥工程も紅茶の品質に関係します。
このように、紅茶の製造では複数の工程が組み合わさっています。
そのため、茶樹の品種が同じでも、製茶工程によって異なる特徴の紅茶を作ることができます。
茶葉のグレードと品種は別のもの
紅茶を選ぶ際には、PEKOEやBOP、D(ダスト)などのグレード表記を目にすることがあります。
これらは、中国種やアッサム種といった茶樹の分類とは異なります。
例えば、PEKOEやBOP、Dは、主に製茶後の茶葉の形状や大きさなどを示す区分として使用されます。
一方、中国種やアッサム種は、原料となる茶樹のタイプを表します。
つまり、同じ品種の茶樹から作られた紅茶でも、製造や選別の結果によって異なるグレードに分かれることがあります。
反対に、同じグレード名の紅茶でも、原料となる茶樹の品種や産地が異なる場合があります。
この違いを理解すると、紅茶の商品表示をより正確に読み取れるようになります。
グレードと品質の関係については、こちらの記事で詳しく解説しています。

カメリア・シネンシスについてよくある質問
ここでは、カメリア・シネンシスや中国種、アッサム種について、よくある疑問をまとめました。
紅茶の茶葉から緑茶を作ることはできる?
紅茶の原料として使われる品種の茶葉から、緑茶を作ることは可能です。
紅茶と緑茶は、基本的に同じチャノキを原料としているためです。
ただし、紅茶として加工が完了した茶葉を、そのまま緑茶に戻すことはできません。
紅茶の製造工程では茶葉の成分が変化しているためです。
正確には、紅茶用として栽培されている茶樹から新鮮な葉を摘み、緑茶の製法で加工すれば、緑茶を作ることができます。
日本の緑茶とインドの紅茶は同じ植物?
基本的には、どちらもカメリア・シネンシスというチャノキから作られています。
ただし、栽培されている品種や系統は異なる場合があります。
日本の緑茶には中国種系の品種が多く利用されています。
一方、インドの紅茶産地では、アッサム種系や中国種系、さまざまな交配系統などが栽培されています。
そのため、同じ植物種に属していても、茶樹の特徴や製造方法には違いがあります。
アッサム種から緑茶を作ることもできる?
はい、可能です。
アッサム種は紅茶の原料としてよく知られていますが、緑茶の製造に利用することもできます。
ただし、アッサム種の葉を使えば、必ず一般的な日本の緑茶と同じ味になるわけではありません。
茶葉の成分や製造条件が異なるため、独自の風味になる場合があります。
ダージリンは中国種とアッサム種のどちら?
ダージリンでは、中国種系の茶樹に加えて、さまざまな系統やクローン品種が利用されています。
そのため、ダージリン紅茶を中国種かアッサム種のどちらか一方だけに分類することはできません。
茶園や栽培区画によっても、利用される茶樹は異なります。
また、ダージリン特有の香りや味わいは、茶樹の品種だけでなく、標高や気候、摘採時期、製造方法なども関係しています。
茶葉が大きいアッサム種の方がカフェインは多い?
アッサム種は中国種より葉が大きい傾向がありますが、葉が大きいことだけでカフェイン量が多いと判断することはできません。
茶葉のカフェイン含有量は、品種や栽培条件、葉の成熟度などによって変わります。
また、実際に飲む紅茶のカフェイン量は、使用する茶葉の量や抽出条件によっても異なります。
そのため、「アッサム種だからカフェインが多い」「中国種だから少ない」と一律に判断するのは適切ではありません。
紅茶と緑茶のポリフェノールは同じ?
紅茶と緑茶には、どちらもポリフェノールが含まれています。
ただし、その成分の構成には違いがあります。
緑茶にはカテキン類が比較的多く含まれています。
一方、紅茶では製造中の酸化反応によってカテキン類の一部が変化し、テアフラビン類やテアルビジン類などが形成されます。
そのため、紅茶と緑茶は同じ植物を原料としていても、含まれるポリフェノールの種類や割合が異なります。
詳しくはこちらの記事で解説しています。
▶︎ 紅茶のポリフェノールとは?種類・特徴・カテキンとの関係を紅茶工場が解説

まとめ|紅茶も緑茶もカメリア・シネンシスから生まれる
今回は、紅茶と緑茶の原料となるカメリア・シネンシスについて、中国種・アッサム種・交配種の違いも含めて解説しました。
最後に、今回のポイントを振り返ってみましょう。
- 紅茶・緑茶・ウーロン茶は、基本的にカメリア・シネンシスというチャノキから作られる
- カメリア・シネンシスは、ツバキ科ツバキ属の植物
- 中国種は比較的小さな葉を持ち、冷涼な環境にも適応しやすい傾向がある
- アッサム種は比較的大きな葉を持ち、温暖湿潤な環境を好む傾向がある
- 中国種とアッサム種の系統を掛け合わせた交配種も栽培されている
- 交配種とクローン品種は異なる概念で、両方の特徴を持つ茶樹も存在する
- 紅茶と緑茶の大きな違いは、主に製造方法によって生まれる
- 紅茶の味わいは、品種だけでなく産地や栽培環境、製茶工程によって変わる
紅茶と緑茶は同じ植物から作られる
紅茶と緑茶は、見た目も味わいも大きく異なります。
しかし、その原料は基本的に同じカメリア・シネンシスという植物です。
茶葉をどのように加工するかによって、紅茶にも緑茶にも、ウーロン茶にもなります。
また、同じ植物種であっても、中国種やアッサム種、さまざまな交配種など、茶樹には多様な特徴があります。
こうした違いを知ることで、普段飲んでいるお茶を新しい視点から楽しめるようになります。
中国種・アッサム種・交配種の違いを知ると紅茶選びが楽しくなる
私たちがスリランカ・キャンディで運営する農園でも、中国種とアッサム種の交配種を栽培しています。
紅茶の味わいは、茶樹の品種だけで決まるものではありません。
栽培する地域の環境や、収穫した茶葉を加工する工程など、さまざまな要素が関係しています。
茶樹の品種、産地の環境、そして紅茶工場での製茶工程。
それぞれが組み合わさることで、一杯の紅茶の個性が生まれます。
次に紅茶を選ぶときは、産地名や茶葉のグレードだけでなく、どのような茶樹から作られているのかにも注目してみてください。
いつもの紅茶が、少し違った味わいに感じられるかもしれません。
この記事の監修
BlenteaLab.(VALUE SALES JAPAN株式会社)
スリランカのグループ会社(工場・茶園運営:VALUE PLANTATION Co.Ltd,)から高品質な茶葉を直接輸入・卸販売する紅茶専門店。
農園での栽培・製茶から日本国内での販売まで一貫して携わる「現場の知識」をベースに、紅茶やハーブの正しく美味しい楽しみ方を発信しています。





